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ノルシュテイン オープニングトーク【最終回】
初日に開催した籾山晶夫氏によるトークイベントの様子をご紹介する第5回目。
今日はいよいよ、未完の傑作『外套』についてのお話をご紹介して、このシリーズを終わりたいと思います。

その前に、『外套』についてのご説明を少しだけ。
原作は、19世紀ロシアの偉大な小説家のひとり、ニコライ・ゴーゴリが1841年に書き上げた短編小説です。物語の舞台は、19世紀後半のロシア、ペテルブルク。50歳を過ぎた、しがない公文書の清書係のアカーキー・アカーキエヴィチが、こつこつと貯めたお金で新調した外套を強盗に奪われ、追い剥ぎの幽霊となって人々の外套を奪い、復讐するという物語です。

ノルシュテインは1980年に『外套』の製作に着手しますが、ロシアという国に事情に加えて、映像の完成度を追求するあまり、現在も未完成のままで、誰もその全貌を知ることはできません。
トークでは、『外套』に対するノルシュテインの思いの強さが伝わってくるエピソードが紹介されました。


5.未完の傑作『外套』に対するノルシュテインのこだわり
※「」内は籾山氏のお話
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「上の写真は、アルティアムに展示している巨大なマケット『ネフスキー大通り』の上に展示されている、『街の上の赤ん坊アカーキー』という作品です。
『外套』はまだ製作途中ですので実際どうなるか分かりませんが、この場面はおそらくその冒頭のシーンになるだろうと言われています。ヤールブソワが描いたもので、ペテルブルグの街並みを上空から眺める赤ん坊のアカーキーが描かれています。

そして、次の写真がそのもととなったノルシュテインのデッサンです」

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ノルシュテインは、主人公・アカーキー・アカーキエヴィチというキャラクターを徹底的に追求して、彼が幼い頃はどんなだったんだろう、と追求を深めるあまり、ついにはその生まれる前までいってしまったのです。その時に、ダヴィンチの『解剖手稿』を参考にしたのだと思われます。

また、動作の探究につても、ノルシュテインは徹底しています。下の写真は、主人公のアカーキーが毛布にくるまる場面ですが、まず裸のアカーキーを描いて、これに毛布をくるませていくということを行なったのです。

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「でも、これだけではもの足りません。
ノルシュテインは、実際に自分がアカーキーになりきり、毛布にくるまり、それをカメラマンに撮らせる、ということまでして動作の研究をしているのです」


会場では、ノルシュテインが描いたアカーキーのデッサンも多数展示しています。

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また、『外套(部分)』(20分)を常時上映しています。
アカーキーのリアルな動きや、言葉を失ってしまうような強い表情からは、この作品に対するノルシュテインの愛情の深さを感じさせられます。
ぜひ会場でお楽しみください。

限られた時間の中で、講議のような、内容の濃いお話をして下さった籾山氏。
「イメージには、たくさんの記号が含まれています。そしてそれを読み解くと、様々なことが分かるのですが、それがなかなか難しい」
と、トークの最後にお話されました。
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ノルシュテインの作品の中にちりばめられた「記号」。
このブログでご紹介できたのはそのほんの一部に過ぎませんが、新たな視点でノルシュテインの作品を楽しむきっかけとなれば幸いです。

★「ロシアアニメーションの巨匠 ノルシュテイン&ヤールブソワ展」は、11月28日(日)まで!どうぞお見逃しなく!


【画像】(上から)
・「街の上の赤ん坊アカーキー」1984年[F.Y.]
・「アカーキーの誕生」1985年[Y.N.]
・「毛布にくるまるアカーキー・アカーキエヴィチ」1985年[Y.N.](2点)

by artium | 2010-11-19 16:55 | ノルシュテイン&ヤールブソワ


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