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会場の様子をいち早くお届けします!
隈研吾×ローランド・ハーゲンバーグ トークイベントレポート 前編
おまたせいたしました!初日に行った隈研吾氏とローランド・ハーゲンバーグ氏のトークの様子を三回に渡ってお届けします。作品画像提供は、Kengo Kuma & Associates 、会場写真は本村大河氏撮影となっております。

15年前から交流を続けてきたお二人。トークイベント冒頭、ローランド・ハーゲンバーグ氏から今回のテーマである「未来建築」について自らの言葉で語ることから、二人のトークは始まりました。



未来建築ー2つの現代建築「シェル」と「スキン」

隈研吾×ローランド・ハーゲンバーグ トークイベントレポート 前編_f0023676_1473186.jpgローランド・ハーゲンバーグ氏(以下、R)
15年ほど日本で活動し、現代建築の取材をしてきて、「現代建築は2つのグループに分けられる」という結論に至ったんです。1つはシェル(殻)、もう1つはスキン(皮膚)。
堅い殻のイメージのシェル。その典型には、丹下健三氏設計の東京都庁がありますね。第二次世界大戦後の日本の再建という過程において、ヨーロッパの影響を受けつつ、安全を求める中で生まれてきた建築方式だと言えるんです。保護されているけれど、一人一人のパーソナルスペースをつくることが難しい建築でもある。
一方のスキンは、身体の延長として柔軟性を持ったイメージ。第二次世界大戦を経験していない、未来を楽観的に見ている世代による、外界と自分自身を積極的につなげていこうとする建築です。
「未来建築」の展覧会では、スキンタイプの建築を集めました。外界と繋がろうとするスキンの建築は、ポジティブな未来を示してくれるはず。

隈研吾氏(以下、K)
ローランドは「スキン」と表現しているけど、最近、僕が「オーガニック」という言葉で考えているものと共通してるんですね。生物のスキンのような、インタラクティブなもの。人間の皮膚も、単に薄いものがついているわけではなく、外が寒いときゅっと縮んだり、たくさん食べたら膨らんだりする。そういったインタラクティブ性が、スキンの本質だと思うんで。シェルの中では、守られるのかもしれないけれど、それ自身が堅くて重い。インタラクティブかどうか、という点がシェルとスキンの最大の違いではないかなと思いますね。


隈研吾氏の作品の中で、「スキン」、「オーガニック」を感じられるものを
貴重なスケッチや写真などのビジュアルイメージを添えながら、お二人に解説していただきました。



小さな粒の建築ーグラナダ・パフォーミング・アーツ・センター

K:一番初めにお見せするのは、スペインの街グラナダのオペラハウスなんですね。スペイン人スタッフが教えてくれたんだけど、グラナダは「ザクロ」って意味なんです。ザクロって何が面白いのかっていうと、小さな粒が中にあるでしょう、その粒が全体を構成してる。そういうザクロみたいな建築をつくろうと思って設計しました。大きな建築だけれども、実は小さな粒が全体を構成している。大きな建築はどうしてもシェルっぽくなるけど、小さく分解することによってインタラクティブなものになってくれるんです。
このグラナダのオペラハウスは、大きなものを小さく分けるときにハニカム状の形を使って分けてるんですね。ハニカム状の形は、建物全体を支える構造体にもなっていて、柱や梁がなくても、1500人位が入れるようになってます。
隈研吾×ローランド・ハーゲンバーグ トークイベントレポート 前編_f0023676_1481078.jpg

R:ヨーロッパでは、劇場と言うと必ずエンペラー(皇太子)専用の部屋がありますよね。
でも、ここにはそういうものはない。民主主義的な建物の構造になっていますね。

K:全員がエンペラーになれる、ということですよね。このハニカム状の1つ1つのセルがあるでしょう?ここは自分だけの空間のように感じられる。普通の劇場だと、劇場全体で1つのものだから、中心にエンペラーの席があって、全体を支配しているヒエラルキーができてしまう。ここでは、大きい建築を小さくしたことによって、小さいセルの中で、みんながお城のボスになれる。ローランドが言ったように、そういう「民主主義的」なものを、僕はやろうとしてますね。

小さな建築にはこのところずっと興味があって、物としての大きさが小さいだけじゃなくて、小さな「単位」を意識してます。コンクリートは、単位が分からなくて、大きな塊になっちゃって、シェルっぽくなってしまう。僕が考えるスキンの特徴は、小さな単位でできていて、1つ1つの単位を積み重ねて、人が自分で組み立てられることなんですね。
それは、人間が小さな細胞が集まってできていることと関係があると思うんだよね。体がコンクリートのような塊でできていたら、動きようがないわけじゃん。小さな細胞でできているからこそ、自由に動いてくれるんじゃないかって。そういう皮膚みたいな感じのものをつくったらいいと思ってるわけです。

隈研吾×ローランド・ハーゲンバーグ トークイベントレポート 前編_f0023676_1492180.jpg
アルティアムで模型を展示している「浅草文化観光センター」(2011年開館予定)も、大きなビルだけれど、小さな家が重なっているような構成となっています。インタラクティブなスキンの建築たち、未来建築への展望をぜひ会場でご覧下さい!

『未来建築 日本からオーストリアへ』
〜1月11日(月・祝)までとなっております!


レポートの続きは後編で・・・
「小さな建築」の実験のお話をお届けします。

by artium | 2009-12-16 14:28 | 未来建築


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