人気ブログランキング | 話題のタグを見る
会場の様子をいち早くお届けします!
ノルシュテイン オープニングトーク【第2回】
初日に開催した籾山昌夫氏によるトークイベントの一部をご紹介する第2回目。
前回は、アニメーションに向かう前のノルシュテインが画家を目指していたというお話しでした。
今日はその続き、サユーズムリトフィルムでアニメーターとして活躍するようになった頃のノルシュテインと、ロシアアヴァンギャルド芸術の関わりについてのお話しをご紹介いたします。


2.ノルシュテインの作品とアヴァンギャルド芸術の関わりについて
※「」内は籾山氏のお話

ノルシュテイン オープニングトーク【第2回】_f0023676_1552487.jpg

「ノルシュイテンの映画を、可愛らしいなぁ、とか、楽しいなぁ、とか、そんな楽しみ方も、もちろんいいと思います。でも、ノルシュテインの創造を、もっと深く理解しようと思ったら、もしそこに、何か隠された記号のようなものを読み解こうとするならば、美術史の知識が多少は役に立つのではないかな、というのが今日のお話の内容になります」
と籾山氏。

籾山氏は、1964年に描かれた《二重肖像》など、世界初公開作品をふくむノルシュテインの絵画作品と、パウル・クレーやカール・シュミット=ロットルフなどの作品と比較しながら、その類似点を指摘していきました。

「私がここで言いたいのは、決してノルシュテインがこれらの作品を見て描いたということではなく、この頃のノルシュテインの関心が、1920年代のアヴァンギャルド芸術にあった、ということです」
ノルシュテイン オープニングトーク【第2回】_f0023676_1571441.jpg

「アヴァンギャルド芸術とは、大雑把にいうと、本物らしく再現するというようなアカデミックな表現を時代遅れのものとして、新しい、実験的な表現を追及した芸術運動です。ロシアでもヨーロッパでも、大体20世紀の最初の30年間に盛り上がり、ロシアではソビエト政権崩壊によって、1930年代の半ばに否定されてしまいます。

中でも1967年に制作されたノルシュテインの初監督作品『25日-最初の日』には、アヴァンギャルド芸術、とりわけロシアのアヴァンギャルド芸術が多用されています

籾山氏は、『25日−最初の日』のシーンと、ロシアアヴァンギャルドの芸術家たちの作品の写真を並べ、その類似点を指摘していきました。
『25日−最初の日』に出てくる赤い建物のシーンと、ウラジーミル・タトリンの《第三インターナショナル記念塔》の模型。『25日−最初の日』の武装した労働者の群像表現と、アレクサンドル・デイネカの《へトログラード防衛》…
次々に紹介されるどの作品も、本当によく似ています。
ノルシュテイン オープニングトーク【第2回】_f0023676_1573515.jpg

「『25日−最初の日』は、ノルシュテインがこれまで関心をもっていた、ロシアをはじめとするヨーロッパのアヴァンギャルド芸術から様々に引用したイメージで構成された、ある意味で、“アヴァンギャルドのコラージュ”のような映画になっているわけです」

作品タイトルの25日とは、旧暦で1917年10月25日、ロシア革命が起きた日のことです。
皆様、ぜひその創作の背景もふまえ、お楽しみ下さい。
次回のお話では、ノルシュテインの製作の裏側に迫ります!

★『25日−最初の日』は以下の日時にご覧いただけます
・会期中の土日 13:00− Aプログラム
・11月25日(木)18:30− ノルシュテインナイト

ちなみに、現在福岡市美術館では、2011年『シャガール ロシアアヴァンギャルドとの出会い』展を開催中です(2011年1/10まで)。ロシアアヴァンギャルドの芸術家たちの貴重な作品も展示されていますので、興味のある方はぜひ足をお運び下さい。
福岡市美術館 http://www.fukuoka-art-museum.jp/
by artium | 2010-11-02 15:16 | ノルシュテイン&ヤールブソワ


<< ノルシュテイン オープニングト... ノルシュイテン オープニングト... >>